人と自然が「おりあい」をつけながら
柏崎・夢の森公園の設置目的
自然との共生を考える場を提供していくことを基本コンセプトとし、市民との協働のもと、里山の復元やさらに新たな循環の仕組みを提案できるような公園づくりを目指すとともに、この公園を中核フィールドとして、自然体験、環境エネルギー教育、ライフスタイル教育といった3つの柱で運営していく「環境学校」を展開していく公園事業である。
無限大の可能性
私たちは公園の設置目的を果たすことはもちろん、柏崎がより魅力的で持続可能なまちになることに貢献したいと考え、価値観が大きく変わりつつある現代の環境に合わせて柔軟に活動を展開しています。 癒しや憩いの場としての公園という「ハード」の機能に加え、イベントや体験プログラムといった「ソフト」の機能を合わせ持つ柏崎・夢の森公園の可能性は無限大です。
私たちはスタッフだけでなく協働する市民ボランティアの方々や柏崎市内の団体のみなさまとともに、開園以来様々なチャレンジを続けてきました。2022年現在、公園の設置目的を踏まえ、多くの方と協働しながら行っている、私たちの重点取組についてご紹介します。
ケモノと戦う公園
人と野生動物とのつきあい方を問われる、古くて新しい社会の課題
近年メディアを騒がせる、クマやイノシシの出没情報。 野生動物が、農林業や自然環境、そして私たちの生活に著しく影響を与えることを獣害問題といいます。 ここ柏崎でも、近年イノシシが急増。また数年前まで見かけることもなかったニホンジカの目撃情報も増えています。実際に人身被害、そして街中への出没情報も頻繁に報告され、農作物被害の出た山間部や高齢な方からは、もう耕作をやめるという話も。 他にも課題はありますが、この状態は「持続可能」な社会ではないのではないかと感じています。
私たち人間は昔から植物やケモノなど「自然の恵み」をうけ、命をつないできましたが、 近年、自然環境や人々のライフスタイル、気象が大きく変化することにより、 ケモノの暮らしと人々の暮らしの間にあったバランスが崩れ、上記のような問題が発生しています。
柏崎・夢の森公園では開園当初より「持続可能な暮らし」が大きなテーマの一つになっています。 この現状に対し、自然公園として何かできること、役にたてることはないかと考え、私たちなりの野生動物との関係、そして向きあい方を考えるに至りました。
私たちができることから始める
獣害問題といっても、様々なパターン、様々な立場、様々な関わり方があり、正解も一つではないと思います。 まずは正しい情報や知識を得るために、柏崎・夢の森公園では、展示やイベント、講習会等を通じて、「知る」、そして「伝える」ことから取り組みを始めています。
この複雑な課題に取り組むにあたり、ただ必要以上に恐れたり、過剰に動物達を排除することがないようにすること。そして多くの人が「自分ごと」として考えられるようになることが、重要ではないかと感じています。
人もケモノも丁度良いところで折りあって生きていける地域・社会を築きたい。
そんな想いから、地域の方々と共に学び、考えることを目的に、 柏崎・夢の森公園は「ケモノと戦う公園」を掲げ、地域の課題である獣害問題、野生動物との関係について取り組んでいます。
- ケモノや狩猟についてのイベントや講習会の会場として
- 地域単位で野生動物のミニ講習会
- 学校授業や校外学習のテーマとして一緒に学びを作っていく活動
- ジビエピザやシカウィンナーの出店
- 鹿の角を使ったクラフト等
柏崎の自然体験×憩いの公園=地域の観光
「専門スタッフが自然体験を提供する」という特色を持つ柏崎・夢の森公園では、これまで市内の豊かなフィールドを活用した自然体験を提供してきました。 また、園内の里山環境の保全活動は市民ボランティアに支えられ、カキツバタなどの花を気軽に楽しみたいと、市内外からも来園者が訪れる公園に成長しました。
自然体験のフィールドや市民に育まれた魅力ある環境は、「地域らしさ」を持った観光資源です。憩いの場として気軽に訪れやすい都市公園としての魅力も最大限に活かして、魅力ある観光地域づくりに貢献していきます。
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カキツバタを柏崎の宝に…
公園ができる前は地元の方の田畑や薪炭林で、大池含む水辺エリアは田んぼでした。 その田んぼの周りや用水路に咲いていたカキツバタ。 種の保存という観点だけでなく、その美しさから 「これを市民の手で育んでいこう!」と現在の水辺に移植し、育成がはじまりました。
日本一のカキツバタの名所に向けて、市民が支え育てる 開花期の来園者数は6千人から現在は2.5~3万人まで増え、花数も2015年には3万本に到達。 「いつ咲くか」とまるで孫のように見守る方も少なくありません。
【取り組み1】市民の手にこだわったかきつばた苑の育成事業 「目指せ!日本一のカキツバタ」を合言葉に、開園前から市民ボランティアの手で移植・株分け・草刈りなどの手入れと育成を行ってきました。中心団体の里山環境づくりネットワークは、一年を通して、暑くて足元が悪い湿地の中をたくさんの汗を流して作業しています。2022年はさらなる目標の5万本達成に向け、カウントイベントを開催。 車いすでもゆっくり渡れる木道から近くで楽しめる良さと、水辺いっぱい濃紫一色に染まるカキツバタの見ごたえは、国内屈指です。
【取り組み2】こいのぼりプロジェクト 全面協力:柏崎ライオンズクラブさま 「市内に眠る使わなくなったこいのぼりたちをもう一度青空へ!」。広々とした公園を利用して、2010年よりこいのぼりを上げています。2021年からはカキツバタの上を泳ぐようになり、かきつばた苑をより楽しんでいただく仕掛けになりました。
【取り組み3】イベントでまつり感を充実! 都市公園としては珍しい併設施設を利用して、カキツバタまんじゅうや日本茶など、カキツバタや柏崎の思い出を持って帰れるお土産事業ほか、地元先生方と連携しての俳句大会・生け花・吊るし飾り、地元産業大茶道部のお茶会、水辺ガイドや坐禅会など水辺で楽しむイベントを開催。イベント運営を得意とした環境学校事業の運営ノウハウを生かし、市外からのお客様も楽しめるイベントが充実してきました。
地域の自然の保護保全と市民の憩いの場という2つの観点から、植栽エリアにある見ごたえ抜群のお花畑と貴重な山野草の生息地という2タイプの景観を、ボランティアの活躍も得ながら整備し、柏崎の自然を通年で楽しめるように取り組んでいます。 菜の花畑やかきつばた苑は観光スポットとして個人・団体のお客様に多数ご来園いただいています。また、コロナ禍で外遊びが見直される近年では、散策やウォーキングを楽しめる施設、バス旅行の休憩スポットとしての利用もあります。
ソフト部門を運営するホールアースは自然学校の草分け的存在として創業当時からリアルな自然を実体験することを大切に、ガイドツアーやエコツーリズムに力を入れてきました。市内にある自然資源を、市外・県外の方に知ってもらい、また、市民が誇りに感じられるような観光資源化・パッケージ化にこれからも取り組み続けます。
- ゴールデンウィークの観光スポット化に向けたイベント開催と市外への広報
- かきつばた苑の整備と観光イベント化 まつり期間の来園者数は6千人から2.5万人まで増え、花数も2015年には3万本、2022年には悲願の5万本到達にむけてカウントイベントを開催予定
- カキツバタ開花期にこいのぼり100匹を設置
- 企業の地域貢献活動で観光スポットあじさいロードの整備
- 谷根川渓流ツアー(市内谷根)
- 海キャンプ(市内番神海岸)
- 親子釣り体験・磯遊び体験(中央海岸・西鯨波海岸)
SDGsについて
「やっと時代が追いついたか…」
SDGsってなに?
SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に国連が採択した2030年までに達成を目指す17つの目標です。 この目標は世界が解決しなければならない課題を表しています。
これらの課題はすべて私たち人間の行動が引き起こしています。このまま経済発展だけを優先し続ければ世界はあっという間に立ち行かなくなります。私たち自身の持続可能な発展のため、SDGsは私たちに「環境保護・人権の尊重・経済発展(開発)」の3つが調和した行動を求めています。
「ここに来ると思い出すんだ、あの…」
ゆめのもりが取り組んできた 環境保護と問題提起
環境保護はSDGsの中でも特に重要視されています。それは、私たちの社会と経済が自然環境の土台があってこそ成立するものだからです。水、食料、気候。私たちは常に地球環境とそれを支える生物多様性が生み出す恩恵を受けて生きています。逆にいえば土台となる環境が破壊されれば社会は不安定になり、経済成長どころではなくなってしまうのです。
柏崎・夢の森公園は開園から15年間、環境学校として里山の自然環境を保護すると同時に多くの人に自然との共生を考える場を提供してきました。 それは、公園を訪れる人たちが自然の中で過ごすことで自然とのかかわりや愛着や感謝を思い出すお手伝いをするためです。
日々の忙しない生活の中で私たちの課題への意識は驚くほど簡単に遠のいてしまいます。SDGsで言われるようにみんなで課題解決に向かうためには、ひとりひとりが課題に関心を持ち、イメージし、そして思いをよせることが必要です。
柏崎・夢の森公園は自然体験を通して、多くの人が環境保護という最重要課題に意識を向けられるよう、活動してきました。これからも公園を訪れれば「思い出す」そんな場所であり続けたいと思っています。
「あなたは持続可能ですか?」
インナーサスティナビリティ
インナーサスティナビリティとは個人の心や体の持続可能性のことです。世界ではSDGsの達成にはまずインナーサスティナビリティの充実が大切だと語られています。個人の心や体が良い状態であることが持続可能な世界につながるからです。
自分の心や体や生活に余裕がないとき、他人や自然に心を寄せることはできるでしょうか?世界の課題に目を向けることはできるでしょうか?
がんばりすぎて壊れそうになりながら生きている人たちが、自然の中の活動を通して自分を取り戻せるように、こころとからだをリフレッシュできるように。夢の森公園はそんな目的も持って自然体験をすすめています。
「私たちの掲げる18番目の目標」
SDGsには17つの目標があります。カラフルな図の最後の空白にはリングのマークが入れられることが多いが何か不自然ではないでしょうか。
これは私たちの自主的な動きへの期待を込めたメッセージと受けとる見方もされています。つまり、「18番目のゴールを掲げるのはあなただ」と暗に示されているのではないかということです。
そうだとすれば、夢の森公園はこう掲げます。