ゆめのもりの描く未来

ゆめのもりの描く未来

柏崎・夢の森公園は平成30年で11周年を迎えます。
平成29年、開園10周年を機に私たちがこれまでの10年間で大切にしてきたこと、
そしてこれからも大切にしていきたいことを、地元紙「柏崎日報」に、 毎月掲載しました。

夢の森公園が何を大切にし、どんなことをしているのか?
このメッセージをご覧いただき、少しでも興味を持っていただけましたら
ぜひ夢の森の活動の輪に加わっていただきたいと思います。

私たちとともに公園創りを楽しむ仲間になってください!
よろしくお願いいたします。

管理事務所所長 遠藤 亮

夢の森の10年、そして今を熱く伝えたい

〜2017年4月〜

「柏崎・夢の森公園」と聞いて、どのようなイメージが浮かぶでしょうか? 開園から10年、平成28年度の来園者数ははじめて9万人を超えました。魅力あふれる里山のフィールドでは、毎年1,000人以上の市民がボランティアとして森の手入れや調査、体験活動に活躍しています。そして地域の人の手で手入れされた里山で地域の子どもたちが自然に触れ合い、地域を愛するきっかけをつくる環境教育が行われています。その数は年間1万人を超え、対象は子どもだけでなく多くの大人も参加しています。またそこで出会った人たちが新たな地域イベントを立ち上げるなどの新しい動きも広がっています。このような意味において、夢の森公園はこの10年間で市民が公園づくりに継続的に関わりながら、柏崎の自然と未来の人材を育くむ場となりました。環境教育に長く携わってきた経験から、その活動内容とそれを支える仕組み、今後の広がりの可能性を併せ持つ活動拠点として、夢の森公園は全国的に見てもめずらしい公園であると言うことができます。まさに柏崎の宝のひとつとして、全国に誇れる公園です。しかしこのあたりのことがあまり伝わっていないことは残念なことです。これから先の10年、夢の森公園の可能性をさらに広げていくためには、より多くの方に公園をご理解いただかなければいけません。まだ十分に伝わっていないことをチャンスととらえ、活動内容やその意義をより多くの人にご理解いただくことで、夢の森公園が世界にひとつしかない魅力あふれる里山公園へと発展していくことを願っています。
実際にどのような活動をしているのか? 活動自体は知っているが、その活動は地域にとってどんな意味があるのか? このような疑問に応えるべく、毎月1回テーマを決めて夢の森公園の10年と今を熱くお伝えしていきます。夢の森公園の活動の背景には、現代の日本社会が抱える問題の縮図があります。ふるさとの景観を維持してきた里山環境の荒廃や、新たなコミュニケーションツールが登場しているにも関わらず、人とつながる安心感を感じにくくなってきた社会という背景の中で、夢の森公園でどのような市民活動や環境教育が行われているのかを詳しくお話します。またそれらの活動の結果として、現在夢の森公園はたくさんの市民が集まる居場所へと成長しつつあります。本当の意味で「夢があふれる森」を実現するための私たちの日々の取り組みを、楽しみにお読みいただくとともに見守っていただければ幸いです。

夢のつぼみが花開く場所

〜2017年5月〜

夢の実現には時間がかかるものです。しかしだからと言って何も始めなければ、夢は実現しません。開園から10年、夢の森でも小さかった夢のつぼみが、徐々に徐々に花開くようになってきました。それは決して大きなことではないかもしれません。しかしその波は確実に広がり、ひとつの物語となって夢の森公園で結びつきつつあります。
10年前、1万本に満たなかったカキツバタ。夢の森の市民活動のひとつ、「森づくり活動」で毎年地道に株分けを行ってきました。株分けは夏場に大量の汗をかきながら行う重労働ですが、その活動が実を結び一昨年の調査では3万本を超えるまでになりました。その様子は新聞やテレビなどでも取り上げられるようになり、木道の間に広がるカキツバタは、柏崎の5月の風物詩のひとつとして多くの市民に親しまれています。
市内のお母さん、お父さんを中心に立ち上がった子育て支援や外遊びをテーマにした「青空くるくる」というイベント。きっかけはこんなことがしてみたいという一人の小さな声でした。「それ、おもしろそうだね」と集まってきた仲間の力で、少しずつ活動は広がっていきました。夢を実現するためには、小さくてもいいからはじめの一歩を踏み出すことが大切です。そこで生まれた小さな渦がやがていろいろな人を巻き込んで、本人さえ思いもよらない波となって広がっていく。その波は、カキツバタと「青空くるくる」に共通しているように思います。
夢は新しいことへの挑戦です。赤ちゃんが新しいことに挑戦できるのは、自分を守ってくれるセーフベース(安心基地)があるからです。これと同じことが大人にも言えます。安心できる場所と仲間があってはじめて一歩を踏み出す勇気が生まれ、挑戦することができるのです。自分自身も楽しみながら新しいことに挑戦し、仲間と支え合って行う市民活動が、夢の森公園で行われるようになったことはうれしいことです。
5/13-14の2日間、10周年イベント「ゆめ森くるくる」が開催されます。今回ご紹介した3万本のカキツバタと「青空くるくる」の楽しいイベントが行われますが、そこにさらなる夢の花が加わりました。夢の森大池の上に泳ぐ約100匹のこいのぼりと、青空の下初めて行われるカラオケ大会です。広報かしわざき5/5号でも公園の楽しみ方が紹介されていますので、チェックしてくださいね。いつかあなたの「やりたい」も夢の森で花開くことを願って!

柏崎の「里山の復元と創造」に取り組んでいます。

〜2017年6月〜

柏崎・夢の森公園は「里山の復元と創造」に取り組んでいる公園です。自然資源の調査活動や森づくり活動などのさまざまな市民活動が行われていますが、「ちょっと待てよ? こんなに緑豊かな柏崎でなぜ森づくりが必要なんだろう?」そんな風に思った方もいるかもしれません。今回は一見緑豊かに見える柏崎で進みつつある自然環境の荒廃と、夢の森公園の取り組みについてお伝えします。
里山とは人の手が入ることで保たれてきた自然のことです。人が入ることで雑木林や草地、田んぼ、畑など多種多様な環境が生まれ、それぞれの環境に適応したたくさんの生き物が生息していました。しかし、高度経済成長以降のライフスタイルの変化で、人が山に入ることはなくなり伐採されないスギ林は薄暗くヤブ化、耕作放棄される田んぼも増えています。このように一見緑に見えても人の手が入ることで保たれていた多様な自然環境がなくなることで、50年前ほど前まで当たり前にあった生物多様性が失われているのです。現在絶滅の恐れのある動植物が集中する地域の約6割が里山にあると言われています。これは全国的にみられる現象ですが、柏崎も例外ではありません。
このような背景を踏まえ、夢の森公園では里山の復元活動が活発に行われています。また保全された里山環境での教育活動や、木質ペレット(木質燃料)の製造・活用など、里山に現代的な新しい価値を創り出す活動も行われています。私たちは「開園はスタート、公園づくりはここからが本番」を合言葉に、この10年間たくさんの市民の方とともに「里山と復元と創造」に取り組んできました。言うまでもなく、これには地域を愛する人の力が必要です。そして活動に参加している方の地域を愛する気持ちは、年を追うごとに強くなっているように思います。私たちはもっともっと多くの方に「里山の復元と創造」の公園づくりに関わっていただくことが、結果的にふるさと柏崎全体の自然を豊かにすることにつながっていくと考えています。
公園では10周年を機に「里山と暮らしの講座」を始めます。大人を対象にした里山について楽しみながら体験的に学ぶ機会です。ぜひご参加ください。

真の市民協働とは? ともに創ることの意味

〜2017年7月〜

柏崎・夢の森公園は、市民協働による公園づくりを行っています。「ともに創り、ともに育む」という言葉を大切にし、公園職員だけでなくたくさんの市民活動のみなさんとともに活動してきました。清掃やカフェ、森林管理、体験活動などに携わる20名以上の職員、そして年間1千人を超える市民活動の方々は、みな夢の森が大好きです。そしてこの数年、夢の森を愛する職員や市民の気持ちが公園を核にどんどん広がり、より多くの人にこの気持ちが届くようになったと感じます。この公園を愛する気持ちこそ、市民協働の原点です。
この10年の市民協働による公園づくりは一定の成果をあげてきました。しかし私たち職員がもっと幅広くそして深く協働関係に踏み込むことができれば、さらなる協働を実現できるのではないかという直感もあります。それができない理由を改めて考えてみると、その理由のひとつに協働の持つ困難さを無意識のうちに避けてきたことがあげられます。多くの人が関わるということはそれだけたくさんの思いが交錯することであり、当然人間関係の摩擦や混沌とした状況も生まれます。しかし、公園を愛する気持ちがあるからこそ摩擦や混沌が生じるのですから、そこに向き合わなければその熱意や多様性を活かすことができません。市民協働の現場を取り持つ職員としてはうまくこの場を回さなければ…、私がなんとかしなければ…という使命感や迷いがあります。しかし、摩擦や混沌を共有してもらえる関係性に感謝し、楽しさや喜びだけでなく居心地の悪さや緊張感もその場を信頼してともに感じきる。「当たりさわりなくその場を回す」のではなく、「当たりさわりながらともに創る」へ進化していきたいと思っています。
クリエイティブ・カオスという言葉があります。創造的なものが生まれる前にある混沌という意味です。少々の混沌からは小さな創造物が、深い混沌からは大きな創造物が生まれるということですね。これからもきっと生じるであろう混沌や摩擦を怖れず、その先にある未来を信じて、私たちは市民協働による公園づくりを続けていきます。

環境学校の挑戦~行動変容につながる環境教育

〜2017年8月〜

環境学校とは、柏崎・夢の森公園という名前が決まる前から公園コンセプトとして掲げられてきた環境教育活動の総称です。環境学校の先生は、夢の森の里山の自然やそこにすむ生き物たちです。私たち職員はそんな自然の不思議やメッセージをわかりやすく伝えることを通して、これからの私たちの暮らしについてともに考える場づくりを行っています。この10年間さまざまな取り組みを行ってきましたが、環境学校は地域の持続可能性に大きな影響を与える教育活動であると確信しています。
環境学校で重視しているのは、実体験です。自分自身の肌で感じることで初めて腑に落ちることがあります。急激に進む情報化社会の中で、肌感覚を伴った生のリアルな体験の重要性は増すばかりです。私たちはまず夢の森で楽しく遊ぶこと、そしてこの森を好きになってもらうことを大切にしています。人は好きでもないものには無関心になりがちですよね。どんなに環境問題が声高に叫ばれようとも、「他人事」であるうちはなんの行動にも結びつきません。夢の森での楽しい体験は、地域の自然環境を「自分事」としてとらえるために極めて重要です。
また環境学校では、自然を活用した循環型の暮らしの知恵を学ぶことも大切にしています。里山の自然から食べ物やエネルギー、ものをつくる材料を得ることなど、人間の生活になくてはならない自然の存在について体験的に学んでいきます。そこで生まれるのは夢の森で体験する非日常と、自分自身の日常の暮らしの間に生まれる「!?」です。なぜ私の生活はこうなのか? 私はこれからどうしたいのか? 参加者は気づきであったり疑問であったりするこの「!?」を起点に、これからの自分の暮らしを考え始めます。しかしどんな行動変容も一人ではなかなか実現が難しいものです。頭ではわかっているのに行動に結びつかないことは多くの人が感じていることでしょう。私たちは環境学校に参加した人と一緒学び合える「ゆるやかなつながり」を同時に得ることが、自分自身の暮らしを持続可能な暮らしへ具体的にシフトしていく上で重要だと考えています。夢の森公園はそんな行動変容に向かう人たちのサードプレイス=第3の場所として、持続可能な地域の未来につながる環境学校の取り組みをこれからも続けていきます。

持続可能な暮らしってなんだろう?

〜2017年9月〜

柏崎・夢の森公園では、「持続可能な暮らし」という言葉を大切にしてきました。左の図は私たちが考える持続可能な暮らしに必要な要素です。図の中心には「私」がいて、私は自然、社会、自分、他人という4つの要素になんらかの形で関わりながら暮らしています。持続可能な暮らしには、自然とのつながり(環境共生)と、人とのつながり(人間関係)が欠かせません。この種の議論がされる時、環境共生の視点だけが語られることもありますが、人間関係は私の暮らしを支える土台であり、持続可能性を考える上で外せない要素です。私の左側には、自然と自分があります。里山や森、海、川などの「外なる自然」とどう折り合いをつけながら暮らすか、本当の自分や自分という自然とも表現される「内なる自然」とどのようにつながるかです。一方私の右側には、他人と社会があります。自分以外の個人、たとえば家族や友達、職場の同僚などの他人とどう接するか、自分が所属する集団、たとえば学校や会社、地域といった社会の中で、私はどういう関係を築き行 動するかということです。
現代社会では中心にいる「私」がこれらの要素とつながろうとする時、多くの問題が発生しています。地球温暖化をはじめとする環境問題や、自殺、うつ病、ひきこもり、いじめといった人間関係における問題は、今や一部の人の特殊な問題だとは言えなくなっています。自然とつながること、そして人とつながることは、このような不具合や苦しみを生む要因にもなりますが、それは同時に喜びの源泉でもあります。持続可能な暮らしにはいろいろな形があると思いますが、共通しているのはそれが喜びにあふれた幸せな暮らしであるということでしょう。私たちは4つの要素との関係をつなぎ直す「関係教育」=「関わり方の学び」を提供することを通して、自然とつながる喜びと人とつながる喜びを今よりもっと感じられるようになる人が一人でも増えてくれたらと願っています。柏崎が持続可能な地域であるために、夢の森は喜びが生まれる森であり続けたいと思っています。

「ホンモノ」の魅力を引き出す『裏側』

〜2017年10月〜

夢の森公園のエコハウスには、たくさんの生き物たちが展示されています。館内に入る方は、大きな水槽の魚やカエルなどの里山の生き物を、興味深く眺めていきます。そこには「ホンモノ」が持つ力があります。展示される生き物たちが自然と人をつなぐとともに、それを通じてコミュニケーションをとる親と子や孫といった、人と人をつなぐ役割も同時に果たしているのです。ただ、単に生き物を展示しさえすればこのような効果が得られるかというとそうではありません。「ホンモノ」の魅力引き出す『裏側』に、見えない努力があります。
公園の管理運営を考える上で、新しく魅力的なものを持ってくることは大切なことです。しかし、単に新しいとかおもしろいとか、今までにないものを持ってくればよいというわけではありません。これまでの10年の活動を振り返って思うことは、夢の森にある「ホンモノ」が掘り下げられて提示されている展示や体験活動には力があり、必ず人を寄せつけるということです。今の時代、どの地域もどの施設も生き残りをかけ、様々な取り組みをしています。それぞれに「ホンモノ」はあるはずですが、残念ながら「ホンモノ」が感じられないことも少なくありません。単なる見た目のよさやパッと目を引くデザインだけでは、通用しなくなっているのです。本当に満足してもらったりまた来てもらうためには、今そこにある「ホンモノ」の現状や課題を時間をかけて調査したり分析する準備段階の見えない努力が不可欠です。生き物の例では日々のお世話なども準備段階の大切な要素です。この『裏側』はデザインのように目に見える部分ではありませんので、妥協せずにやりきるには強い思いが必要になります。人目につくデザインは「ホンモノ」を再提案する最終段階です。すべてをやり切れているわけではないかもしれませんが、頭だけでなく体や心も使いながら、夢の森にある「ホンモノ」の魅力を多くの人に伝えていきたいと考えています。この10月は夢の森公園の「ホンモノ」のひとつ、たき火の週末イベントを行っています。ぜひ足を運んでくださいね。

変化を生み出す「対話」の力

〜2017年11月〜

「柏崎・夢の森公園は、指定管理者(アール・ケー・イー/ホールアースグループ)による運営が始まって3年になります。この3年間、偶然や直感から生まれるものにも意識的に取り組んできた結果、森の結婚式やカキツバタを題材にした演歌の作詞作曲など、これまでにはなかった新しい動きが生まれてきました。自分たちだけで今までと同じことをやっていても同じ結果しか生まれない。一緒にやったことがない人とやったことがないことに挑戦しよう! その姿勢や思いがこのような変化につながったと考えています。しかし「人が集まる=よい結果とは限りません。それどころかお互いの価値観の違いから衝突してしまうこともあります。今までにない結果や変化を生み出すためには、多様な人が集まる場に「対話」というつながりの時間を、ていねいに展開していく必要があるのです。
図のように対話とは、会話や議論とは違います。悪い会議の典型として、会話も対話もなくいきなり議論を始めるケースがありますが、よい議論をして行動を起こし意味のある結果を生み出すためには、お互いの価値観やものの見方、信念を共有する対話のステップが必要です。しかし当たり障りのない会話から対話に移行するには、自分自身が大切にしていることを開示していく「一歩踏み出す勇気」も必要になります。自分の思いを出すことが怖い・面倒といった理由から、本当の意味での対話に至らないケースもよく見られます。私たちはファシリテーションと呼ばれる対話を深める場づくりの技術を使って、お互いの違いを対立要因ではなく資源として活用し、多様なアイデアを結びつけAでもBでもない、まったく新しいCを生み出すことに挑戦しています。
11月19日(日)の13時半から15時半まで、ここ数年の夢の森の変化を生み出すきっかけになった対話の場「わいわいミーティング」が行われます。夢の森公園でこんなことをしてみたいというワクワクを、みんなでおしゃべりしながら育てていく年1回のミーティングです。堅苦しい会議ではありません。みなさんのご参加を心よりお待ちしています。~WELCOME ゆめのもり!

立ち止まり自分と向き合う

〜2017年12月〜

2017年も残すところあとわずか。10周年を迎えた夢の森。個人的にはあっという間に過ぎた1年でした。みなさんの1年はいかがだったでしょうか?
多くの慌ただしい現代人にとって1年の節目である年末年始は、少し自分を振り返る時間になりますよね。人よりも早く、人よりも多く、人よりもうまく何かを成し遂げることが求められる現代社会。常にやるべきことに追われ、雑音が多く「本当の自分の声」を聴きとることが難しい世界とも言えます。そんな社会の中で私たちが歩き続けていくためには、時に立ち止まることが必要なのかもしれません。立ち止まり、雑音の届かない場所に身を置いてあるがままの自分の声に耳を傾ける…。現代という時代は、そんな立ち止まる時間が誰にとっても必要なのではないでしょうか?
しかし、立ち止まって今ここの自分と向き合うことは、少し勇気がいることでもあります。過去のことを憂い未来のことを心配し、目の前のやるべきことに追われながら、忙しく動き続けるほうが楽という側面もあるでしょう。でも、自分の内なる声を聴かずにたどり着いたその先は、本当に行きたかった場所ではないかもしれません。自分だけの人生を歩んでいくためには、今ここにとどまり自らの内側からわきあがってくるものに耳を傾けてあげることが必要です。
そういう意味で自然は、立ち止まることができる場所としておすすめです。日常から少しだけ離れた夢の森公園の「身近な非日常」の中で、自分と向き合う時間を持つ。私たち公園職員も日々の業務に流されがちになる忙しい時期にあえて、立ち止まる時間を設けるようにしています。最近公園では小中学生に「人間関係トレーニング」を提供したり、企業研修の中でマインドフルネスな時間を持つことをサポートすることが増えてきました。個人団体向けの自分と向き合うプログラムも随時提供していますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。それでは、今年1年どうもありがとうございました。よいお年をお迎えください。

冒険しよう~怖いと思ったらGO!

〜2018年1月〜

「あけましておめでとうございます。お正月は「今年はこんなことに挑戦してみよう!」と意欲がわく時期ですね。挑戦は今までの慣れ親しんだ快適な世界から、未知なる世界へと踏み出す冒険です。文字の通り冒険とは「危険を冒す」ことです。危険を冒すのは誰でも怖いですが、その怖さを乗り越えた先に楽しさや心地よさ、そして人としての成長があります。何かに挑戦しようとする時、必ずこの危険ラインを超える必要がありますが、無自覚でいることは人を今までの快適ゾーンにとどまらせます。これまでの人生経験で培った安全センサーが脳の中にあり、危険を察知すると自動的に危険から遠ざけようとするからです。これは人が安全でいるためには必要ですが、その状態が必ずしも安心ではなくなってくることがあります。それは人が新たな世界へ成長する時期を迎えたサインです。この危険ラインは「エッジ(境界線)」と呼ばれ、快適ゾーンから飛び出すことで人は成長していきます。
人生は自らの世界を広げていく冒険、成長の物語です。戦術の通り成長には怖さが伴い、なんらかのエッジを超える必要があります。怖いと思う時あなたはエッジに向かっており、その方向に一歩踏み出すことが成長につながるのです。ここから導き出せることは「怖いと思ったらGO!」というちょっと常識とは異なる答えです。無自覚ではなく、「怖いと思うその方向に一歩踏み出せば成長する」ということを自覚できていれば、少し勇気がわいてきますね。
夢の森公園にもこれと同じことが言えます。平成30年、11年目を迎える夢の森公園もさらなる成長を目指しています。つまり危険を冒し怖さを自覚しながら進んでいく必要があるということです。自分たちだけでやっていれば安全で安心かもしれませんが、そこからは成長や革新は生まれないでしょう。新しいことに挑戦していく夢の森の冒険が、きっと今年もたくさん繰り広げられます。ぜひみなさんにもこの冒険の輪に加わっていただき、応援していただければ幸いです。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

「ホーム」~私をいつも受け入れてくれる森

〜2018年2月〜

みなさんには安心できる居場所がありますか? 家や地域、会社がそうだという人もいるでしょう。大切な家族や古くからつきあいのある地域の友人、会社を通してつながった仲間がいる場所は、大切な居場所ですね。しかし、昨今この状況が少し変わってきています。血縁、地縁、社縁という言葉がありますが、これらのコミュニティが衰退しているのです。例えば私の親類にも血縁にだけは助けを求めないという人もいますし、現実的に頼る人がいないケースも増えています。隣人の顔がわからない地域も増えています。また日本を支えてきた企業神話も今や昔。会社が私を守ってくれる時代ではなくなりました。このような既存の居場所の衰退は、新たな「孤立」を生み、大きな社会問題となっています。
一方、現代の日本は欲しいものはほとんど手に入る豊かな社会になりました。モノのなかった戦後と比べると、この変化はそこに生まれる人、生きる人の価値観に大きな変化をもたらしています。がんばってお金を得ることよりも、私はなんのために生きるのかがより重要になってきたのです。なんのためにそれをするのか? それをすることは社会にとってどんな意味があるのか? このような変化は居場所やコミュニティにも影響を与え、自分が本当にやりたいことや、価値があると思うことでつながる縁を大切にしている人が増えているように思います。もちろん依然として血縁も地縁も社縁も大切ですが、思いや志を軸につながりあう人が増えてきているのは、現代社会の大きな特徴と言えそうです。
ここ数年夢の森でも、このような新しい縁、「思縁」や「志縁」が生まれ育っています。いつも変わらずに私を受け入れてくれる場所、「ホーム」がある安心感。夢の森は多くの人にとって、そんな安心を感じられる居場所のひとつでありたいと願っています。今年4月から公園のカフェが装いを変えてオープンします。その名も「I’m Home(アイム ホーム)」。誰もが「ただいま」と言って帰ってこられる場所です。まだ少し先ですが春の芽吹きとおいしいコーヒー、お食事をぜひ楽しみに来てくださいね。

小さな渦を起こせ! 出現する未来へ

〜2018年3月〜

最近の世の中の動きを見ていると、これから先の見通しが立たずいったいどうすればいいのかと悩む人や組織、地域が増えているように感じます。厳しい状況であればあるほど、パワフルなリーダーの出現に期待したり、なんとかなるさと現実逃避したり…。私たちはこのような先行き不透明な状況に対して、過去の延長線上にないクリエイティブな解決策を見出すことはできないのでしょうか? その答えのひとつに「出現する未来からの学習」という考え方があります。
学習サイクルとして有名なPDCAは、過去のふりかえりから計画が生まれる「過去からの学習」と言えます。現代の複雑にからみあう問題はその全容を明らかにしにくく、何を行うべきかという答えを事前に知ることはできません。どれだけ筋が通っているように見えてもそれは仮説です。一方、ありそうでなかった過去の延長線上にない解決策は、事前に計画を立てることはできません。もし計画通りに生み出せるのであればこれまでにも生み出せていたはずだし、誰かが生み出している可能性が十分あるのです。
では、具体的にどうするのか? 私たちは直感に従い、「とりあえず小さくはじめてみる」=「小さな渦を起こす」ことを大切にしています。重要なのはどこかに引き寄せられるような漠然とした「なんとなくという感覚」。直感を頼りにすることは当然リスクを伴いますが、だからこそ思いつきもしなかった想像をはるかに超えた展開、イノベーション(革新)が実現されます。単なる思いつきではなく、質の高い直感にもとづいた、質の高い試行錯誤をしていきたいですね。
今回のイラストは夢の森公園の春の風物詩、カキツバタのイメージキャラクター「かきつばたん」(画:asao)です。このかきつばたんも、夢の森が仕掛ける小さな渦のひとつ。はじまりは小さな渦かもしれませんが、これが10年後に思わぬ大きなうねりとなっている可能性はあります。次なる10年、開園20周年に向けて、私たちは柏崎地域の一助となる挑戦者であり続けたいと思っています。今後とも、柏崎・夢の森公園をどうぞよろしくお願いいたします。